テーマ: 梅崎春生『桜島』と『幻化』研究

日本戦後文学、特に戦争文学といえば、梅崎春生は抜けばいけない存在である。彼は参戦した経験があるため、それをもとに戦争文学を書き始めた。彼の作品の中では、目に見えるような戦争の迫力が感じられる。『桜島』と『幻化』は梅崎春生の代表的作品で、日本で広く知られるだけでなく、海外でも高い評価が得られている。本研究を始める前に、梅崎春生『桜島』と『幻化』の先行研究を整理する必要がある。

長谷川泉（1995）は『桜島』について、『桜島』に登場した人物の精神世界を分析した上で、彼らの戦争の恐怖から逃げ出す方法も具体的に明らかにした。村上兵曹、吉良兵曹、耳のない娼妓、見張りの中年兵、特攻隊の若者たちなどが死との対決の中で、自分はどうやって生きていけばいいかという質問を自問した。例えば、吉良兵曹は自我の歪曲的克服をもって死に対する、それに対して、村上兵曹は複雑なヒューマニズムの陰影を刻まれた自我主張として死に対する。戦争の中で、幸せになれる人は一人もいない。平民は唯自分の死に方を選ぶしかできないではないかと筆者が主張する。

岸本隆生（1985）も『桜島』について、主人公が軍隊に入って、感情を持たない人間になった軍隊の真相を論じていた。戦争の非人間性、軍隊の非人間性を代表する吉良兵曹と「私」の対立で「私」の無力感を読者に感じさせる。「青春を空費したことが、一番悔やまれる」と梅崎春生が書いた。戦争の悲惨さや、軍隊という組織の中での人間の極限状況に、言いようもない悲しみと、憤りを読者に感じさせたのである。軍隊の非人間性の例として、この論文では吉良兵曹は、部下のひとりが「梨を食った」と言っては「残り全部の兵隊」を制裁することがある。

『桜島』について、鶴岡征雄（1994）は主人公が「美しく死ぬ、美しく死にたい、これは感傷に過ぎない。」と言われた「私」はなぜ美しく死にたい理由は、その避けられない死への抵抗で生への執着であると述べている。