文 献 综 述 　 冥婚（死霊結婚、死後結婚）という習俗はアフリカ各地の諸部族の間で広く行われており、またドイツの報告例もある。

しかし、最も研究蓄積が多いのは中国#12539;韓国#12539;日本といった東アジアの国に関するものである。

日本と中国における冥婚研究はさまざまある。

筆者の関心することは日本における冥婚の特性と分布状況を把握することであるが、中国における冥婚習俗も視野に入れたうえで、日中の冥婚の異同点を比較してみる。

本研究は冥婚についての（1）定義#12539;起源、（2）目的#12539;動機、（3）分布#12539;状態、という三項目を掲げ、従来の研究報告を要約#12539;概観したうえで分析を試みている。

冥婚の定義#12539;起源 　松崎憲三の「東アジアの死霊結婚」（岩田書院,1993.ｐ1）によると、日本で、冥婚という習俗はよく「死霊結婚」といわれる。

他にも「冥界結婚」、「冥界婚（姻）」、「死後（結）婚」、「幽霊（結）婚」など、様々な名称がある。

竹田の「東アジアにおける死霊結婚ー韓国の習俗を中心にー」（松崎憲三編『東アジアの死霊結婚』,岩田書院,1993.ｐ212.）により、死霊結婚といえば「冥婚」を、「冥婚」といえば中国を想起させるような情勢さえ形成されたのであると指摘されている。

このように、死霊結婚という習俗はやがて日本や韓国にも伝承されていることが判明してきた。

一方で、顾春军の「”冥婚”流变考论」（《中原文物》.2014年06期.第42～53页.）により、中国で「冥婚」というこの名称は唐太宗の貞観年間からは初めて使われていたことがわかる。