文献综述

(一) 曾根正人（2007年）『聖徳太子と飛鳥仏教（歴史文化ライブラリー228）』吉川弘文館

本書によると、飛鳥仏教史と奈良仏教史の上で仏教思想は、インド、中国、日本の三国において最終的に完成させたという観点を提出した。特に、後代の『聖徳太子信仰』と、歴史的事実とは、キチンと分けて考えるべきである。「ありのままの日本の歴史を認めよう」と訴えたい。聖徳太子その人よりも、歴史的な仏教受容にこそそのウエイトがある様子である。

(二) 狩野久（1999年）『古代を考える古代寺院』、吉川弘文館

本書において進展著しい考古学や歴史学#12539;建築史学の最新の成果をもとに、蘇我氏の飛鳥寺はじめ、独創的で個性豊かな伽藍様式をもつ四天王寺#12539;川原寺#12539;山田寺などを復元しその実像に迫る。律令国家の仏教政策や平城京#12539;地方の寺々を取上げ、古代寺院の歴史的意義を多角的に探る。古代の知的冒険の旅へと駆り立て、新しい古代史像を構築する。

(三) 木下正史（2005年）『飛鳥幻の寺、大官大寺の謎』角川書店、

本書において文献資料や発掘で解明された事実をもとに、飛鳥#12539;都市計画の全貌に迫る。本書は単に発掘の結果から大官大寺の実際の姿を描くだけでなく、発掘作業に伴う前処理、後処理の重要性を丁寧に描いており、考古学、歴史学の面白さを実感させてくれる。飛鳥#12539;藤原京の時代に、日本最古にして最大の勅願寺「大官大寺」は、『日本書紀』などの文献に登場するだけで、実態は謎に満ちていた。ところが、近年の大規模な発掘調査で発見された九重塔跡や百済大寺は、大官大寺の実像を伝え、それまでの飛鳥の都市景観を覆すことになった。