文 献 综 述

1. 1.深澤真紀『平成男子図鑑』日経BP社、2007

本書では、まず男性を「おやじ」と「男子」に二分している。その定義は、以下のとおりである。ここで言う「おやじ」は、おもに団塊の世代(1940年後半生まれ)からバブル世代(1960年代後半生まれ)までの、40～60代の男性である。一方で「男子」は、おもに1970年代生まれの団塊ジュニア世代(『下流社会』の三浦展氏の名づけた「真性団塊ジュニア世代」も含む)、すなわち20代半ば～30代半ばの男子が中心となる。『平成男子図鑑』で、「男子」を中心として、その生態や行動原則、活用法などを考えている。さらに23種類に「男子」を分類していて、平成男子の状況を紹介している。そのなかで、「草食男子」を、『恋愛に「縁がない」わけではないのに「積極的」ではない。「肉」欲に淡々とした「草食男子」』と定義している。

２．森岡正博『草食系男子の恋愛学』メディアファクトリー、2008

　　森岡正博は「草食男子」ではなく、「草食系男子」という用語を用いる。それは「新世代の優しい男性のことで、異性をがつがつと求める肉食系ではない。異性と肩を並べて優しく草を食べることを願う、草食系の男性のこと」だと、本書は定義している。基本的に心が優しく、自分の欲望をがつがつ押していくのが苦手で、傷つくことと相手を傷つけることがほしがないで、性欲や恋愛願望はあるが、それほど積極的ではないという感じの男性を指すのであろう。本書では、草食系男子が何を考えているのか、恋愛において何に悩んでいるのかが手に取るように分かる。草食系男子を好きになってしまった女性は読むと、草食系男子との恋愛の進め方の役に立つであろう。また男性がこの本を読めば、女性を傷つけない方法で恋愛を進めていくにはどうしたらいいかが分かるであろう。今の時代、男女関係にいいだろう。

３．森岡正博『最後の恋は草食系男子が持ってくる』マガジンハウス、2009

本書では、まずいま混乱している「草食系男子」の再定義と草食系#12539;肉食系を８種類の理念型で説明している。そして、実際の草食系男子４名へのディープインタビューをとおして、彼ら20代～30代の草食系男子の恋愛観、結婚観、人生観を、直接聴き取っている。それをとおして、様様なタイプの草食系男子がいることが明らかにしている。また女性たちから投げかけられた48の具体的な質問に対して、著者が答えている。ネット上では、「草食系男子」というのは女性目線で、男性にレッテルを貼ってバカにする言葉という見解も多くあるが、本書では、元#12539;草食系男子である著者が、草食系男子に対して共感的#12539;肯定的な立場から、草食系男子の恋愛を解説し応援している。

４．森岡正博「『草食系男子』の現象学的考察」―『the review of life studies』―2011-01―pp.13-28

この論文では、まず「草食系男子」という言葉の誕生を説明している。次に、著者が自身の見解と『草食系男子の恋愛学』（前掲）を執筆した初志と後の影響を述べている。大切なのは、若い男性の草食化がいつから始まったかについて、作者は以下のように考えている。若い男性の草食化は第二次大戦終結とともに始まって、現在までコンスタントに続いてきたということである。若い男性の草食化は日本の平和の副産物だったのである。最後にジェンダーの視点から草食系男子を考察して、女性への影響を分析している。

５．編委会『流行している言葉をとおして日本を見る』外国語教育と研究出版社、－2012